1974
(昭和49年)
1974年度(1974年4月〜1975年3月)
相談受付件数
総受付件数54件
相談内訳|業種別
- 1不動産
- 2食料品
- 3出版・印刷物
- 4旅行
- 5医薬品
- 6各種学校・養成所
- 7石けん・洗剤
- 8レコード・テープ
- 9文具・事務用品
- 10金融・保険
相談内訳|媒体別
- 1新聞
- 2放送
- 3雑誌
- 4折込
- 5ポスター
- 6看板
- 7ラベル
- 8パンフレット
1974年度(1974年4月〜1975年3月)
広告・表示に関する意見の傾向
消費者の企業に対する不信感の高まりから、広告の自主規制機関設立の機運が高まり、1974年8月にJAROが設立された。当初、米国ベタービジネスビューロー(BBB)に範をとった日本版BBBを設立する計画だったが、広告関係者からの発意を明確にする意味からも広告・表示問題から入るべきとの結論を得て、名称「日本広告審査機構」と決められた。8月28日設立総会のあと10月15日に社団法人の許可を経てスタートし、初年度は半年ほどの業務となった。苦情は秋口から寄せられ始め、初年度の受付件数は54件。消費者を誤認させる虚偽・誇大広告の事例が目立ち、業種では不動産、媒体では新聞が多数を占めた。
オイルショックが社会・経済に大きな影響を与え、消費生活では合成洗剤やマルチ商法が消費者問題となった年だった。
※媒体別の1974~1978年度はテレビ・ラジオ計を「放送」として計上、1979年度から「テレビ」「ラジオ」を別々に計上している。
1974年度(1974年4月〜1975年3月)
寄せられたご意見(一部)
医療事務講座
各種学校が行う医療事務講座のチラシで、「初めての主婦やOLでも無理なく請求事務者になれる」「修了後はすぐ実務につけるよう就業指導にも特に力を入れている」「診療報酬請求事務士の資格を与える」とあるが、受講後の修了試験で100点満点を取らないと修了証書がもらえず、仕事も買い手市場の狭き門が実態である。(事例集No1)
グループ保険
夫が病に倒れ、廃疾(身体障害を伴う回復不能の病)の認定を受けて厚生省2級と認められたが、広告に「業務上、業務外を問わず、加入者が死亡または廃疾の場合、全額支払われます」とあったのに保険金が支払われない。(事例集No2)
マンション広告
マンションの新聞広告に「新宿駅まで36分」と書かれているが、ラッシュ時は55~60分かかる。広告は事実と異なる。(事例集No3)
飲食店
「特別サービス 1,200円バイキング」という飲食店のテレビCMで、画面下に小さな文字で「T・S別」とあるが、「T・S」では分からない。(税・サービス料の意味だった)
1974年度(1974年4月〜1975年3月)
REPORT JAROの記事より
- 8月28日 東京千代田区の東京会館で設立総会。中曽根通産大臣が出席。
- 10月15日 社団法人の許可を得て「社団法人日本広告審査機構」としてスタート。通商産業省所管の社団法人として作業を進めていたが、JAROの性格を考慮し、総理府公正取引委員会および通商産業省の共管となった。
- 苦情処理システムは設立総会直後から小野桂之介助教授(慶應義塾大学)を中心に検討し、社団法人発足と同時にシステムが完成。(画像)
- 苦労の連続だったシステムづくり――JARO苦情審査手続きの設計を担当した小野桂之介氏(慶應義塾大学助教授:当時)によれば、「今考えると冷や汗ものだが、関係者の方々の意見を伺いながら、苦情の受付から審査に至る手順システム、情報ファイル、各種様式など何とかそれらしい形を作り上げた。秋口から実際に苦情が寄せられ始めた。初の苦情到着に目を輝かせて意見をぶつけ合った」(JARO10年のあゆみp126)
- 会報「JAROレポート」(現在では「REPORTJARO」。いつしか名称が反転)は1975年2月に創刊。第1号の巻頭は「会員社300社を突破」という見出し。1974年10月31日時点で会員社数は257社、3カ月後の1975年1月31日では301社。第1号から毎月発行して2024年10月号は通巻597号。(画像)
- 「JAROレポート」は当初、タイトル部分が青いため通称「青レポート」と呼ばれた。会員に審議事例を紹介する「赤レポート」は原則1枚もので、業務委員会の承認のもと、初年度は第1号のグループ保険から7号分を発行した。
- 初年度の苦情は1974年8月30日から1975年3月31日までで37件寄せられ、業種では「不動産」が12件、媒体は「新聞」が22件を占めた。問い合わせは17件で計54件。
- 表示に関する公正競争規約を運用する公正取引協議会との懇談会「関係団体協議会」。第1回会合を1975年3月4日に開催し、25名が参加した。(以降、50年間続いている)
1974年(1月〜12月)
世相と広告
世相
出典:電通 広告景気年表より
第2次ベビーブーム最後の年、エネルギー危機で省エネ・節約の時代に入る。節約こそ美徳の風潮により、ネオンは消され、廊下の電灯も間引かれた。また、狂乱物価沈静のため総需要抑政策がさらに強化。世界的同時不況のなか戦後かつてない2桁物価上昇下のマイナス成長という結果(実質GDP成長率-1.2%)に。日本の総広告費は1兆1,695億円(対前年比108.6%)。媒体1位の新聞に2位のテレビが迫る。この年、サンリオからキティちゃんが登場。
JARO ピックアップ トピック
出典:電通 広告景気年表、消費者庁 消費者問題年表、REPORT JAROより
- 建設省、BL(ベターリビング)マーク制度 を告示(7月)
- オイルショックにより午前0時以降の深夜放送の自粛始まる(1月)。6月から8月にかけて在京テレビ局は深夜放送を10~30分延長。郵政省が深夜テレビの自粛要請を撤廃(9月)。9月末から民放各社は深夜放送を復活。
- 合成洗剤追放運動
- マルチ商法など特殊販売の被害続出
- 日本消費者連盟発足
流行した広告
出典:電通 広告景気年表より
- ソニー・トリニトロンカラーテレビ<タコの赤ちゃん誕生>
- 松下電器産業・クイントリックス<あんた外人だろ>
- 明治製菓・カール<それにつけてもおやつはカール>
- ミノルタ<美人しか撮らない>
- 富士電機<空カンも資源です>
- レナウン<シンプルライフ>